甲状腺に関して

バセドウ病と妊娠

バセドウ病は妊娠可能な年齢の女性に多く発生し、妊娠により大きな影響を受けます。病気のコントロールがちゃんとできていれば、妊娠・授乳に関しては、それほど心配することはありません。
まず妊娠前には、少量の抗甲状腺剤できっちりと甲状腺機能を正常化できていることが必要です。そして妊娠経過中も、甲状腺機能の推移を経過観察していくことが重要です。
特に妊娠初期はバセドウ病が増悪する症例もあるため、注意が必要です。その後妊娠中期以降は、甲状腺機能が安定化していくことが一般的に多いのですが、少なくとも2ケ月に1回程度の甲状腺機能検査を行い、抗甲状腺剤の投与量も調節していく必要があります。
甲状腺刺激物質であるTSH受容体抗体(TRAb)は、バセドウ病における甲状腺機能亢進症の原因と考えられていますが、この物質は妊娠中に胎盤を通過して胎児に移行します。この抗体の活性が高いと、胎児の甲状腺も刺激され、胎児が甲状腺機能亢進となることがあるため、妊娠中は産科医との密接な連携が大事です。
妊娠中に多量のTRAbが胎児に移行した場合、同時に胎盤を移行した抗甲状腺剤の作用が切れると、TRAbの刺激作用が優位となり、出生後4~5日経ったころに、一時的な新生児甲状腺機能亢進症を発症する場合があります。この発症については、妊娠末期のTRAbの抗体価によりある程度発症を予測できる為、小児科医とも連携して経過観察していくことが必要です。
なお抗甲状腺剤は正しい使い方をすれば、健常の妊婦とほとんど奇形の率は変わりませんので心配はいりません。
出産後、数ケ月間は甲状腺機能は安定していますが、その後バセドウ病が発症または悪化する場合があります。この時は、抗甲状腺剤の内服または増量が必要になることがあります。抗甲状腺剤のPTU(チウラジール®)であれば、少なくとも一日300mgまでは授乳ができます。
またMMI(メルカゾール®)という抗甲状腺剤でも使用量、使い方によっては内服しながら授乳ができます。